鍬農雅友blog

32歳/都内在住/読書がライフワーク

交渉の話

昨年、結婚に伴い7年間住んでいたアパートの引っ越しをした。

 

夏は暑くて、冬は寒い。色々と工夫をしないと生活に支障が出る家だったが、立地も良く家賃も手頃で気に入っていた。新卒1年目から住み続けていた家で愛着もあった。

 

ちょうど6年目を迎えた頃、「アパートを建て替えるので来年家を出て行って欲しい」という相談を不動産屋にもらう。

 

不動産の契約の事は正直詳しくないので、なんとなく出て行くにあたって色々と面倒を見てもらえる淡ーい期待を寄せていた。

 

ところが、現実は全く違った。強面の2人の営業マンが僕を訪ねてきて、

「出て行くにあたっての費用は一切払えない。家賃の更新料と火災保険の費用を追加で欲しい」

 

という話をされる。正直ガッカリだ。

まぁ契約ってそういうものなのかなと思いつつも、この展開を少々予想していたので僕は1つカードを持っていた。

 

身元は明かさず、不動産業に勤める奥さんを同席させていたのだ。

彼女に状況を整理してもらう。それから不動産屋の友人にも事前に状況を話し、進め方を教えてもらっていた。

 

この後、交渉は3回ほど続くことになるが、最終的には会社の部長が出てきて、

「立ち退きまで最後の6ヶ月分は家賃無料。更新料など追加費用は一切必要なし。敷金も返金。」

 

というところまでひっくり返る。

 

正直ゴネた訳でもなく、1つずつ知らない事を聞いて行き、面倒くさい客を「演じた」だけだ。

 

向こうは嫌だったかもしれないが、こっちも本気である。

随分最初と条件が違うじゃないか。おたくの商売のカラクリを教えてくれ、最初にふっかけた所から本当はどこまでならお支払いいただけたのか、など聞きたい事が山ほどあった。が、まぁ大人の事情もあると思い野暮な事は聞かない事にした。

 

過激に要求をゴネたり権利を主張する自分もなんだか嫌だし、とはいえこちらの忖度にガンガン付け込んでくる人が世の中には一定数いて、彼らとは徹底的に話し合う必要がある。そう強く学んだ話である。

 

最終的には素敵な条件を提示してくれたのに、初めから適切なご案内をしてくれよ、と少々悲しい気持ちにさえなった。うーむ、お客さんがガッカリするような交渉はやはり仕事人としてよろしくないのである。反面教師。上手に交渉してくれなはれ。

 

それから持つべきものは味方である。知らない事はプロに聞く、聞ける人を持つ。友人や奥さんに感謝。

 

と、いう事で今日の紹介本は佐藤優さんの交渉術

あの日立ち会ってくれた不動産営業担当の方、ぜひこれ読みなはれ。

 

佐藤優さんは元ロシアの外交官であり、ロシア政府との仕事を中心に交渉に関する心得が書いてある。

 

「人は心で動く。そのために相手の事をきちんと理解する事。」

大メッセージとしてはこれ、禿同ですな。

 

本書は「相手を理解する」という意味でロシア民族のことが深掘りして書いてあるので、そういう面でも面白い。

 

ロシア民族は深い仲になってくるとウォッカを交わしながら、サウナで男同士でイチモツをにぎり合いキスをする、という。

 

マジですか、これは。。

さらにこの辺を実践してるあたりが佐藤優さんの仕事人としてのプロフェッショナル性が強く見えた。

 

しかしこれって逆にいえば、ロシア人と仲良くなって仕事を進めていく中で、「最後のひと押し」というところまできたらウォッカを持ってサウナに行けばえぇんやな。難しいようで、簡単かもしれない。

 

ロシアの方々、我々はあなた方に寄り添いたいと考えているので、是非日本人の事も知っていただきたい。

 

日本人は義理堅くて、いい人たちばかり。

例えば、北方領土を返してくれたらロシアの事に興味を向ける人が増えて、ロシアの人たちの事がもっと好きになると思うよ。