「タレント」の時代 〜世界で勝ち続ける企業の人材戦略論 - 酒井崇男
大好きな講談社現代新書シリーズの一冊です。
僕は普段あんまりビジネス書は読みませんが、書店の講談社コーナーに行き、 パラパラと読んでみて面白そうだったので買いました。
簡単に言うと、
本当にみんなが求めるものづくり、サービス提供が出来る優秀な組織ってどんな人たちなんだろう。アップルとかトヨタとかさ。
その人たちを敬意を込めて「タレント」と呼ぶとしよう。
で、タレントってどんな人だろう、タレントがいっぱいいる会社ってどんな組織なんだろう?というのが科学してある本です。
こう書くと、なんだ良くあるビジネス書なんじゃないの?って思いがちですが、ポイントは出版が講談社現代新書であるということ。
かなり緻密な人選がなされている新書・出版社なので、どの本をとっても高い満足感が得られます。この本もまた然り、という感じでした。酒井さんの知的で分かりやすい文章は最後まで一気に楽しく読めました。
売れる商品は設計情報の質で決まる
この本のキーワードの一つに「設計情報」というキーワードがありました。
設計情報とは、売れる仕組みや仕掛けが埋め込まれている知識・才能の情報のことを指します。
例えば、世界一の自動車シェアを持つ「トヨタ」は車を売っている会社ですが、
市場に出すまでに研究開発、市場調査からエンジンの性能、車のデザインなどの膨大な情報の成果物として「車」を送り出しています。
アウトプット(成果物)を出すまでの過程にどれだけ質の高い情報を込められるかが、すごく大事だということですね。
「モノ」の提供に限らずサービス提供も同じ。ディズニーランドは全世界で統一されたミッキーの世界観があるし、スターバックスでは「300円のコーヒー」ってだけじゃなくて、どのスタバに行っても店員さんがニコニコしてたりと、行き届いた社員教育含めてのサービスがあるわけですね。
僕の会社もレシピサイトを運営していますが、これも同じかな。
料理家さんとクライアントさんの商品・レシピの想いをどうユーザに届けるかという、この「どう」の部分の設計をWeb・Web以外の部分のプロダクトに落とし込めるかが非常に大事だということか。
そして世の中に必要とされる高度な設計情報のを生み出すもの結局「人」だよねというお話です。
B級人材の心理
このトピックは次のような書き出しで始まっていました。
かつてシリコンバレーのスタートアップでは人材採用の心得として次のように言われていた。
「B級人材はC級人材を採用する」
「A級人材はA級人材と知り合いである」
...
B級人材を雇うと、C級人材が幾何級数的に増えて行く。
ベンチャー企業がそのサイクルに陥ると企業はすぐに仕事に支障をきたし始める。
...
一方、A級人材はA級人材を連れてくる。そのためにスタートアップでコアチームを作るにはA級の採用に拘るのである。
A級人材ばかり集まれば、コミュニケーションにいちいち言葉がいらず話が早い。
...
結局タレントはタレントを採用する。
A級人材はA級人材と仕事をすることで自分の価値を高められることを知っているからである。
この章は特に自戒となる章でした。 自分のとる行動の一つ一つが積み重なり、結局周りに大きな影響を及ぼすんだなぁと。A級人材ってどんな人なんだろう、と自分なりに考えてみましたが
- 口八丁手八丁じゃない人(学習能力がある人)
- 正直・謙虚な人(周りに好かれて、多くの人を巻き込める人)
- 情報処理能力が高い人(短時間でマルチタスクが可能な人)
こんな感じかな。1,2,3の順番で重要。
会社の人事部の人や自営業を営む父、世の中の経営者の方はきっとこういうことを常に科学しながら人を採用するんだろうなと、採用の難しさを疑似体験できました。
少しでも「タレント」に近づけるようになるにはどうしたらいいんだろう?という想いが僕の中にもあって、この本を手に取りました。
結論、広く視野を持って、いろんな事例や過去をたくさん勉強しつつ、現場でもがく
ってことが大事なのかなと思った本です。
ぜひ読んでみてくださいね。