桜えびと倉沢のアジについて
桜えびと倉沢のアジについて。
およそ3月末〜5月にかけて、静岡では桜えび漁が解禁になり、美味しい桜えびがたべられるようです。
「桜えび」という水産物は全国で静岡県でしか水揚げされないこと、かつ限られた漁師にしか漁獲権が許されていないという非常に希少な海老のようです。
よくよく調べてみたら、東京湾でも採れるっちゃ採れるらしい。が、大人の事情で採ろうものなら大変な捌きを受けるようです。
昨今は、燃料代の高騰や環境の変化で水産物が採れなくなるニュースが多い気がします。イカとかは特にヤバそう。
桜えびはどうでしょうか。色々聞いてみたけど、真偽がわからなかった。
「マジで採れてない」のか「漁師が漁獲をセーブしてる」のか、地元寿司屋の大将に聞いても、本当に漁師しかわからん、というような感じだったんですね。
桜えびは水揚げ単価もすごく高く、周りの漁師からすると垂涎の的。漁獲権を持ってる人が本当に全国で10人くらいしかいなくて、ガッチガチに守られているようです。
さらに漁獲権を持ってる人にも定期的に内外から監査が入り、規律を破ろうもんなら村八分を食らう、そして漁獲権を剥奪されてしまう仕組みが確立されている。
田舎の情報網というやつは無駄に早い。都会に比べて接触する情報量が少ない分、人の失敗や浮いた話が面白くて仕方がないわけです。とにかく早い。
僕自身も出身が熊本の田舎の方ですが、会ったこともない友達のオバさんが僕が東京で働いていることを知っていたり、どこでどう見られているかは分からないってのは関東の人たちよりも敏感だと思う。
静岡の人も然り、田舎の人はみんなだいたいこの「感覚」があって、ルールを破らぬよう、何より漁獲権を次の更新時にももらえるよう、しっかり守っているのだ。ビジネス的にもすごいオイシイ商品なんでしょうね。
そんな大切な大切な桜えびを食べてやろうと、静岡に行ってきました。清水区の由比というところです。
由比漁港は観光地化していて、足を運べば「あーここで桜えびが食えるんだ」というのがすぐわかります。
同じ目的できた人達で長蛇の列を成しているので、食べるには時間がかかるので要注意。
僕もここに行きましたが、ハッキリ言って胸焼けのする桜えびのかき揚げ丼が出てきて、おすすめはしません。
よくある話ですが、「観光地化した場所」と「地元民」というのはあまり仲が良くなかったりします。
お客さんがたくさん流れてくる場所というのは、どんどんビジネスライクになってきて、多少商品のクオリティを抑えてでもたくさん量を捌くことに尖っていきますから、「感動する美味しさ」ってのは小さかったりします。東京だと築地がいい例かもしれないですね。
本当に美味いやつしか俺は出さん、そして味が分からん客は帰れ!くらいの大将のお店に行きたいところです。
で、見つけた。「銀太」という寿司屋です。
案の定、大将は直営所の事を良く思っていなかった。笑 外観こんな感じ。
由比駅を降りてすぐあるので、どうぞ行ってみて下さい。
桜えびのフルコースが食べられます。
ここの料理は本当に美味しかった。値段も高くありません。
桜えびのかき揚げも注文が入る度に油を変えて揚げるそうで、胸焼けも全くありませんでした。
「桜えびよりももっと美味いものが由比にはあるんだよ」とニヤリと大将。
それがアジ!
静岡には「倉沢のアジ」という日本一のアジ(大将曰く)がいます。
僕が行った日はお客さんも他にいなくて、大将にかなりアツく語ってもらって非常に貴重な情報が得られました。推定70近い優しいおっちゃんで、もちろんSNSなんてやる人じゃないので忘れないうちに書き残します。
倉沢のアジとは桜えびを食べて育っている非常に贅沢なアジのようです。
普段は水深の深いところにいる桜えびは、お腹が空くとプランクトンを食べるために水深の浅いところまで上がってきます。それらをガツガツ食べて定置網に引っかかってくるアジが「倉沢のアジ」と呼ばれ、非常に旨味が強いアジとなります。
さらにさらに。
魚界にも上には上がいるもんで、どうやら倉沢のアジの中でも最上位に位置するアジが中にはいるようです。
上がってきた桜えびも満腹になるとまた海底の深いところに降りていきますが、
極一定数それを追いかけて水深の深いところまで下がっていくアジがいます。
海底には脂のたくさん載った「いわし」が潜んでいて、今度はそれを食べ始めてる。
「倉沢のアジ」にさらに脂が載って美味しくなる、というわけです。
運が良ければ食べられるということで、いつも食べられるわけじゃないらしいんですが、なんと運良く食べられました。
これはホンマのホンマに美味い。由比に行かれる方は直営所ではなく、是非こっちに行って下さいな。たくさん桜えびを食べて育っているからか、確かにアジなのに海老っぽい風味がしました。
今の時代、Webで調べればどんな情報でも得られそうですが、眠っている情報っていっぱいあるもんだなと感じた話。
いやー、また行きたい。静岡最高でした。